6月9日。
結婚記念日だ。完全に夫は忘れている。
もっとも覚えていることをハナから期待していないが。
この日の数字の特殊性のおかげで忘れずにすむ。
こうなったら徹底的に結婚記念日を祝うしかない。
夫が結婚記念日を忘れていることに気づいた時に自己嫌悪に落ちることは計算済み。
保育園に送りにいった後でスーパーに寄ってスパークリングワインを買う。こうなったらピンクだ。
そして花束は欠かせない。いぢわるな魔女のような笑いをうかべながらバラの花束を2つ買う。「ヒーッヒッヒ、ラブリーなピンクにしてやれ」。
料理を準備しているときも笑いがとまらない。もっと気分悪くしてやれ。
トドメは“Ardbeg”というウィスキーのプレゼント。ピンクのリボンをかける。先日の出張のときにフランクフルトの空港で仕入れ、タンスの中に隠しておいた。
シャンパングラスをみて夫は気づいた。言葉にならない。
「しまった!」という苦い顔をしている。
平身低頭の平謝りする彼。
「ああ!気分が悪い」と地団太踏んで後悔している。この瞬間を待っていました。
そして最終兵器はウィスキーのプレゼント。ヒーッヒッヒ、どうじゃ。
とても楽しい結婚記念日でした。
こういう現象を私の造語で「ドイツ化(germanization)」という。
おにぎりの具がゆで卵だったり味噌汁の具がミカンの缶詰だったらさすがに離婚を考える、と忘れられない話を披露してくれた友人がいたことをなんとなく思い出す。
さすがに本は人類の財産のうちでは最も古い部類に属するため、全ての国に本が存在すると言っていいだろう。ブックメッセに集う国の数は国際的な催しものの中では最大数のはず。それだけに文字通り世界中の人々に出会うことができ、「その国」に本を通じて接するいい機会である。初日の夜は国別にパーティーがある場合が多く、例えばフランスでは300個ものシャンパングラスとプチフルールがずらっと並んでポンポン!とシャンパンをあける音が贅沢に響き、ドイツではビール瓶とつまみが並んでビヤホールの風情。日本は一番ひどくてガランとしたブースに冷蔵庫、そしてパイプ椅子に座ったサラリーマンたちがプラスチックのコップに入れたビールを飲みながらつまみをつまんでいてまさに新橋のガードレール下。
ドレスデンからフランクフルトまでは飛行機で45分、当然時差はない。乗り換えもないのでラクだと思っていたのに反して今年はなんだか疲れを感じる。各出版社のブースでめぼしい本をみつけたら名刺を出して担当者と話し合いをするが、昨年とは違って出版社側の食いつきが違う。もちろん昨年も各出版者の担当者たちは丁寧に対応してくれたが、今年はどうも私に対する扱いが違う気がする。二年目ともなると勝手や交渉の流れが分かっているので余裕をもって本を物色するので板についた感じに見えるのは確かだが、年とったってことかな、と思った。ブースにもどり、「年のせいよね」と言ったら、一人が「風格が出たってことじゃないですか」。ポジに言うとそういうこと。じたばたしたって仕方がないのでどう年を重ねていこうかと思案し、いっそのこと思いっきりパリのマダム路線を狙っている。「ボンジュール、マダム」とパリで初めて言われたことは記念すべき出来事。
しかしブックメッセは疲れる。とんでもない広さとブース数なので体力的な疲れもあるが、頭が酸欠状態になる。タイトルと表紙で目星をつけるのははじめの一歩で、そして手にとって中身をチェックする時は全身で本を感じようとする。その時はとてつもない冒険をしているかのように感じる。もちろん時間も勝負範囲であるので次から次へと判断していかなくてはいけない、酸素ください。
来年も来られることを願いつつ。
名探偵シャーロック・ホームズと必ずセットになっているベーカー街221B番地。中学生の頃にアガサ・クリスティーの名探偵ポワロやコナン・ドイルの名探偵ホームズなど推理小説にハマった時期があったが、その記憶をたどるようにベーカー街221B番地を訪ねた。
ロンドン出張の最終日は待ちに待ったフリーだったが、前日までの仕事の緊張が解けた反動で熱っぽく、しかも外は雨で残念無念。先方が準備してくれたホテルの近場で済ませる自分も情けないが、なんとか歩いていかれるところにホームズ・ミュージアムを発見。想像したよりも交通量の多い大通りに面しているが、普通の規模のタウンハウスが立ち並ぶ中にあるので間口は狭い。なによりも、この住所が実際に存在していることに軽く呆れ、軽く驚く。入口に立っている警官と一緒にホームズの衣装をつけて写真をとることができる。入口ドアに貼られている告知文書はまさに小説にでてくるもので、小説の断片がそこここに満載。あくまで名探偵ホームズは空想の話なのに、実際に存在するベーカー街221B番地といい、告知文書といい、現実と空想の境界がぼやけるのがこのミュージアムの魅力なのかもしれない。
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専門分野は建築史(住宅史)。
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■ドイツ在住日本人向け情報誌ドイツ・ニュース・ダイジェストの「私の町のレポーター」のライター
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