ドレスデン発 ■ 日常生活・建築・食を中心に路上観察委員会の視線で綴ってゆきまする
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大学の講義が朝一に入っているので夫は朝食後あわただしく出かけていった。
6月9日。
結婚記念日だ。完全に夫は忘れている。
もっとも覚えていることをハナから期待していないが。
この日の数字の特殊性のおかげで忘れずにすむ。
こうなったら徹底的に結婚記念日を祝うしかない。
夫が結婚記念日を忘れていることに気づいた時に自己嫌悪に落ちることは計算済み。
保育園に送りにいった後でスーパーに寄ってスパークリングワインを買う。こうなったらピンクだ。
そして花束は欠かせない。いぢわるな魔女のような笑いをうかべながらバラの花束を2つ買う。「ヒーッヒッヒ、ラブリーなピンクにしてやれ」。
料理を準備しているときも笑いがとまらない。もっと気分悪くしてやれ。
トドメは“Ardbeg”というウィスキーのプレゼント。ピンクのリボンをかける。先日の出張のときにフランクフルトの空港で仕入れ、タンスの中に隠しておいた。
シャンパングラスをみて夫は気づいた。言葉にならない。
「しまった!」という苦い顔をしている。
平身低頭の平謝りする彼。
「ああ!気分が悪い」と地団太踏んで後悔している。この瞬間を待っていました。
そして最終兵器はウィスキーのプレゼント。ヒーッヒッヒ、どうじゃ。

とても楽しい結婚記念日でした。
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 ドイツに暮らし始めて丸6年が経った頃の今日、とうとう夕食に目玉焼きを準備してしまった。手元が狂ったわけでもなく、誰かに薦められたわけでもなく、突然自分から「食べたい」と思ったのである。日本にいた頃、所属していた大学の女性の教授が「夕飯に目玉焼きを作ったら息子が激怒したのよ」という話をし、「そりゃ怒るがな」と笑わせていただいたことがある。目玉焼きは朝食、と日本では相場がきまっているが、ドイツではしばしば夕食に目玉焼きが出る。食事のメニューに厳格な規則があるわけではないが、なんとなく夕食にしか食べない、あるいは朝食には出さないなどの暗黙の了解がある。朝からカレーライスやグラタンは重いし、夕食にホットケーキだったら落ち着かない。それにしても、自然と目玉焼きが夕食に食べたいと思ったことに驚いた。これだけはやってはいけない、と思っていたことなのに、在ドイツ生活が5年を越えた頃からその最後の砦的なことが次々となくなりつつある。夕食に目玉焼き、もそのひとつ。
こういう現象を私の造語で「ドイツ化(germanization)」という。
おにぎりの具がゆで卵だったり味噌汁の具がミカンの缶詰だったらさすがに離婚を考える、と忘れられない話を披露してくれた友人がいたことをなんとなく思い出す。
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「そろそろアラフォーに近いしさー」と言ったら、中学校からの友人が笑いながら「いや、アラフォーだから」と言った。それをこのごろ実感する。フランクフルトのブックメッセは世界最大の規模を誇り、有難いことに二年連続出張で行くことができた。与えられたミッションは、日本で出版に漕ぎ着けられそうな本を探してくること。いうなればバイヤーだが、ブックメッセではトレーダーとして登録する。私が特派員を務める建築雑誌社も今年はブースを構え、二人の若いスタッフが奮闘。

さすがに本は人類の財産のうちでは最も古い部類に属するため、全ての国に本が存在すると言っていいだろう。ブックメッセに集う国の数は国際的な催しものの中では最大数のはず。それだけに文字通り世界中の人々に出会うことができ、「その国」に本を通じて接するいい機会である。初日の夜は国別にパーティーがある場合が多く、例えばフランスでは300個ものシャンパングラスとプチフルールがずらっと並んでポンポン!とシャンパンをあける音が贅沢に響き、ドイツではビール瓶とつまみが並んでビヤホールの風情。日本は一番ひどくてガランとしたブースに冷蔵庫、そしてパイプ椅子に座ったサラリーマンたちがプラスチックのコップに入れたビールを飲みながらつまみをつまんでいてまさに新橋のガードレール下。

ドレスデンからフランクフルトまでは飛行機で45分、当然時差はない。乗り換えもないのでラクだと思っていたのに反して今年はなんだか疲れを感じる。各出版社のブースでめぼしい本をみつけたら名刺を出して担当者と話し合いをするが、昨年とは違って出版社側の食いつきが違う。もちろん昨年も各出版者の担当者たちは丁寧に対応してくれたが、今年はどうも私に対する扱いが違う気がする。二年目ともなると勝手や交渉の流れが分かっているので余裕をもって本を物色するので板についた感じに見えるのは確かだが、年とったってことかな、と思った。ブースにもどり、「年のせいよね」と言ったら、一人が「風格が出たってことじゃないですか」。ポジに言うとそういうこと。じたばたしたって仕方がないのでどう年を重ねていこうかと思案し、いっそのこと思いっきりパリのマダム路線を狙っている。「ボンジュール、マダム」とパリで初めて言われたことは記念すべき出来事。

しかしブックメッセは疲れる。とんでもない広さとブース数なので体力的な疲れもあるが、頭が酸欠状態になる。タイトルと表紙で目星をつけるのははじめの一歩で、そして手にとって中身をチェックする時は全身で本を感じようとする。その時はとてつもない冒険をしているかのように感じる。もちろん時間も勝負範囲であるので次から次へと判断していかなくてはいけない、酸素ください。

来年も来られることを願いつつ。

 

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ベーカー街221B

おそらく世界一有名な住所であろう。
名探偵シャーロック・ホームズと必ずセットになっているベーカー街221B番地。中学生の頃にアガサ・クリスティーの名探偵ポワロやコナン・ドイルの名探偵ホームズなど推理小説にハマった時期があったが、その記憶をたどるようにベーカー街221B番地を訪ねた。
ロンドン出張の最終日は待ちに待ったフリーだったが、前日までの仕事の緊張が解けた反動で熱っぽく、しかも外は雨で残念無念。先方が準備してくれたホテルの近場で済ませる自分も情けないが、なんとか歩いていかれるところにホームズ・ミュージアムを発見。想像したよりも交通量の多い大通りに面しているが、普通の規模のタウンハウスが立ち並ぶ中にあるので間口は狭い。なによりも、この住所が実際に存在していることに軽く呆れ、軽く驚く。入口に立っている警官と一緒にホームズの衣装をつけて写真をとることができる。入口ドアに貼られている告知文書はまさに小説にでてくるもので、小説の断片がそこここに満載。あくまで名探偵ホームズは空想の話なのに、実際に存在するベーカー街221B番地といい、告知文書といい、現実と空想の境界がぼやけるのがこのミュージアムの魅力なのかもしれない。
ここまできて手ぶらで帰るわけにいかない。ホームズなりきりセットとして帽子を買おうかと思ったが、ホームズのシルエットがついているリキュールグラスを2つ買うことにした。そして、私の名刺フォルダーにはホームズの名刺が入っている。そう、本当にホームズは「存在」するのである。
Fendiのバッグ

 
多少多お高い物を買う時にこだわるのは、時計屋の時計、革屋のバッグが欲しいということ、つまり原点になっている本業と商品が一致していて欲しい。バッグのコレクションはすでに30ほどだが、ドイツにきてライフスタイルが変化し、このごろはベビーカーを押すということで出番がめっきり減ったバッグたちが多い。このところ服もバッグも靴もひととおり満足しているが、毎日ベビーカーを押すときに使っているポシェットを新調したくなった、しかも突然。ときどき散財しないと何かが鬱積していくようである。せっかくだからエルメスのエヴリンにしよう、と思い立ったが吉日、HPを検索。高いことは知っていた、しかしこんなに高いとは。値段の単位はタイバーツかベトナムドン?そんなわけがない。エルメスのクオリティの高さは他を寄せ付けないので30万円という値段も納得がいくが、それにしても30万円出しても所詮はポシェット。この金額だったらグッチでもフェンディでもルイ・ヴィトンでも格の高いバッグが買えるではないか。
用事で行ったベルリンで、KaDeWeをみていたらうっかりフェンディに入ってしまった。黒のマンマバゲットを10年前から愛用しているし、ブランドのロゴやトレードマークの色調といった全体のエレガンスさとシックさがとにかく好きなのである。カール・ラガーフェルド恐るべし。
主力商品ではないが、ボディにいくつもかけてあったポシェットタイプのバッグの中から何やら発見、その名もmia Fendiシリーズのmia messenger。面白いベージュの色味で、mia Fendiシリーズの特徴であるロゴの上のゆるいギャザーがフェミニン。かなりの大判で22×40センチほど。ストラップの長さ調節ができてポシェット、ハンドバッグ、クラッチとして使える。そして柔らかいラムスキンで、お値段785ユーロ。清水買いに近かったが、10年ぶりにフェンディを購入。
日ごろから使うもののレベルアップを、と思っていたけれども、このバッグをしみじみと見ていると、とてもではないが日常使いとして酷使する勇気がわかない。確かにグッチのバンブーのセカンドハンドをオークションで買ったけれども、革と金具のクオリティがいいので古くなってもヘタらず、いまだに現役。革屋の一流処のバッグは値段以上のパフォーマンスをみせてくれるのは確かだが、さてはてこのバッグのお披露目はいつにしようか。

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プロフィール
HN:
Yoco F-N.
性別:
女性
職業:
ライター、ジャーナリスト(建築系)
自己紹介:
横浜育ち、現在ドイツのドレスデン在住。
専門分野は建築史(住宅史)。

活動
■某建築系雑誌のコレスポンダント
■ドイツ在住日本人向け情報誌ドイツ・ニュース・ダイジェストの「私の町のレポーター」のライター
http://www.newsdigest.de/news
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