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路上観察委員会 in Dresden, Germany
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「女性の最高の友人はゲイである」
これは本当かもしれない。
 
私が住むここドイツで、ご縁で知り合った若いゲイのカップルは1キロほどの近所に住んでいる。そのうちの一人は日本人であり、初対面以来急接近し、彼がドイツにいる時は毎日会うか毎日連絡をとっている。

空が夏のように輝く春の日が続いた五月のある週末、申し合わせたかのように私の「同居人」と、その彼のボーイフレンドが金曜日の夜から2、3泊ほど留守をすることになった。

同棲生活が長くなった全てのカップルに訪れる感覚は、パートナーが家にいるとホっとするが鬱陶しく、不在だと素晴らしい解放感があるが同時に淋しい、ということである。旦那が働いている平日のランチほど奥様たちを救っているものはない。そう、お互いの「旦那」の留守を私とその彼が見逃すはずがなかった。

金曜日の夜、私の同居人が車で出かけていった時はすでに夜10時に近かった。車で去り行く彼に「じゃあ、気をつけてね」と甘えるように挨拶をし、何度も手を振り見送った。

その直後、その彼に「やっと出かけたわよー、今からそっちに行くわね」と電話をしている自分は一体何なのだ?

車の鍵を忘れたと言って家に戻ってくる可能性もあるので、完全に走り去ったと思われる時間まで自宅待機しなくてはとアタマを働かせたが、これは悪知恵というものだろう。

多少の罪悪感がなかったわけではないが、これくらいの楽しみと秘密があったっていいのだ。しかもゲイとはいえ男は男であり、単に女友達の家に深夜こっそり遊びに行くのとはまた違う感触がたまらない。何よりも、自分のカレがこの事実を知ったらさぞかし複雑な嫉妬を感じるだろうな、と想像しただけで笑いが止まらない。

「いらっしゃーい待ってたわぁ」
その彼はニッコニコで出迎えてくれた。
多少毛深い男性的な腕、オカマ言葉に支えられたオバサン口調、お茶を点てる時の滑るようななめらかな手つき最初は驚きの連続だったゲイの風景は私にとって非日常であったはずなのに、いつしか私の日常の風景になっていることに気付く。女性である私がオカマ言葉にオカマっぽい物腰になって、一体私はどこに向かおうとするのか。環境への慣れとはコワい。

深夜0時も過ぎ、キャンドルの明かりだけで向かい合い見つめ合って淡々と話す一組の男女。

どちらということもなく、いつベッドに誘ってもおかしくない一日の終わり。「ワタクシに女は抱けないわぁ」そっか、こいつはゲイなんだ。

その彼とはシリアスな話から、とてもじゃないが大きな声では言えない話、墓場に持っていく系の話まで幅広く深く話せる仲。一緒にいるのが自然だわいかん、ゲイにハマりつつある。

「ねえ、あなたもう帰ったほうがいいんじゃない?」
時計を見たら午前4時。まだ外は暗く、一応女性である私は「明るくなるまでここにいさせてもらっていい?」と聞いてみる。「送っていこうか?」。あ、そっか、ゲイとはいえ男なのよね。

私の家まで送ってくれたその彼は自転車に乗って静まり返った暗い道を帰っていった。

そして、悪い予感は見事的中した。「モシモシイマツキマシタオヤスミナサイ」。同居人からの留守電メッセージ。見送る時に自分の悪巧みを隠したいばかりに大袈裟に淋しがったのが裏目に出た。今後の再発防止に全力を尽くす所存であります。

翌日土曜日はエルベ川沿いのフリーマーケットに出かける約束であった。限られた日にちの中で凝縮した時間を過ごす映画「マディソン群の橋」じゃあるまいに、別れた6時間後にはその彼は我が家の呼び鈴を押した。

シャワーを浴びた直後の私は濡れた髪にタオルをターバン状態に巻きつけた姿でドアを開けた。しかもノーメイク。

エルベ川のフリーマーケット探検の後、別れ難い空気がかすかに漂う。「我が家でお昼はいかが?」と私が誘うことはすでに予定されていたセリフのように聞こえる。

映画撮影の合間のようにここで一旦解散。「では7時にうちにいらしてトンカツを揚げるわ」とその彼はけだるく言い残して帰って行った。

約束通り7時頃にその彼の家に行く。通いなれた道。

彼はゴマを炒っている最中で「今日は二種類のカツを揚げます」と本日のディナーメニューを説明してくれる。料理の基本を踏まえ作法を熟知しているその彼がキッチンに立つ姿は凛々しいを通り越しておっかない。ヘタに手伝えず、私は座っているのみ。そのほうが身の安全。

手際よくカツが揚がり、ドイツでは命とパスポートの次に貴重品である日本産米にお味噌汁、昆布の佃煮が食卓に並ぶ。こだわりを持って料理し食する理由は、彼がゲイだからか彼自身だからなのか。

食後はリビングルームのソファに座らせてくれた。緑茶をすする。ゲイと過ごす週末のフィナーレは放送禁止か映倫の指し止めをくらうトークが炸裂。その内容はその彼と私だけの永遠の秘密とさせていただこう。

夜0時。濁った水の中に沈めておくような余韻がかすかに二人の間の空気を支配し始める頃、私はその彼との週末を完全に終えることにした。

日曜日の夕方、私の同居人が帰ってきた。「お帰りなさい。元気だった?」。私は彼に何も言わなかった。あまりにも一緒にいることが自然でしばし鮮やかな色を放った週末、そして空白の週末のことを。

ゲイは男と女を隔てる距離を自由に飛翔し、現実と非現実が交錯する不思議な時空間に浮遊している存在。

ゲイと過ごした時間と空間は果てしなく心地よく、天空のようなピュアさとドロリとした沼地のような手触りを私の肌に残してくれた。

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ライター、ジャーナリスト(建築系)
自己紹介:
横浜育ち、現在ドイツのドレスデン在住。
専門分野は建築史(住宅史)。

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■某建築系雑誌のコレスポンダント
■ドイツ在住日本人向け情報誌ドイツ・ニュース・ダイジェストの「私の町のレポーター」のライター
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